バイクに乗っていると度々「このバイク良い音する」みたいな話をされるのですが、私はバイクの良い音というのが理解できません。
私は音楽歴13年目で音にはある程度の教養はありますが、未だに良い音のバイクと言われる音を聞いても「良い音」と思えないんですよね。
そこでクラシック作曲家である私が「良い音のバイク」とは何か真剣に考えてみました。
目次
きぴろの音楽歴
10歳から管楽器を始め、後にDTMを独学。友人に誘われコンビで作曲活動を始める。
後に、KIPIROとしてオーケストラ、コンサートバンド、アンサンブルなどの作・編曲をするソロ活動を始める。
各楽器のインストラクターや楽曲制作をこなした。
現在はネットでの音楽活動が中心で、作曲・編曲・ミックス・楽譜制作まで幅広く行っている。
音楽歴は13年、職業のクラシック作曲家は8年目です。
きぴろの音楽受賞歴はこちらのプロフィールをご覧ください。
良い音のバイクの定義
私がこれまで聞いてきた「いい音と言われているバイク」は基本的に4気筒かV型2気筒のものばかりです。
- 4気筒は高回転型エンジンで甲高い音がするのが特徴。
- V型2気筒は低い回転数でバタバタとパルス感のある音が特徴です。
エンジンと音程の関係
エンジンの回転数は音でいう振動数(周波数)に相当しますので、回転数が高くなれば振動数も高くなり音程も高くなります。
それに加えてマフラーの長さと太さが加わります。
マフラーが長いほど音は低くなり、マフラーが太ければパルス感が強くなる傾向になります。
大排気量のバイクと50ccの原付を音を比べてみるのが分かりやすく、原付のほうが甲高い音がする理由はシリンダーが小さく回転数が高いのが理由です。
2stバイクの音が甲高い理由
同じ回転数でも2stの方が甲高い音になる理由は、4stに比べると爆発間隔が約半分になるわけですので、当然周波数も上がります。
周波数が上がった結果、音も甲高くなるわけです。
世間が言う2つの良い音の定義は正反対
先ほど4気筒とV型2気筒のエンジンの特徴を書きましたが、音の観点から考えるとこの2つの音は正反対の性質を持っています。
4気筒のバイクがパルス感が無いのは、4つのシリンダーから発音される4つの音がマフラーを介して混ざり合うからです。
一方、V型2気筒は同じマフラーを介さない「直管」と呼ばれるもので、それぞれのシリンダーの音が交わらないため一発の音が聞こえやすいわけです。
これが「ドッドッドッ」というパルス感の正体です。
音が大きすぎると耳を悪くする
バイクの排気騒音については最大でも99dBとなっています。
大きな音がするバイクは迫力もありますが、大きすぎると耳を悪くする可能性があります。
具体的には110dB以上で聴力機能に障害がでてきます。
110dBがどれくらいかというと「車のクラクションを目の前で鳴らされた」くらいの音量です。
静かなバイクが好きな人はもちろん音量が小さいほどいいですが、音を重視したい人は静かすぎず騒音ほどでもない80dB〜90dB(走行中の電車内)くらいが良いかなと思います。
音楽家の耳にはどう聞こえている?
私たち音楽家の耳には楽器に通じるものが聞こえています。
DTMをしている人ならシンセサイザーの「ファットベース」、クラシックやジャズなどの演奏家なら「トロンボーン、チューバ」に例えることもあるのではないでしょうか。
バイクを楽器に例えると
音楽に少し詳しい方なら、バイクをトロンボーンという楽器に例えると分かりやすくなると思います。
バイクをトロンボーンで置き換えると
マウスピースと呼ばれる発声をする部分はバイクでいうシリンダーに相当します。マウスピース(シリンダー)が大きいほど1発の振動が強くなります。演奏家はここでも音程調整ができます。
スライドと呼ばれる音程を変える部分はバイクでいうエキゾーストパイプに相当します。スライド(エキゾーストパイプ)が長ければ長いほど音程が低くなります。
ベルにミュート(マフラー)をつけることで音色を変えることができます。ミュート(マフラー)を変えると音色も変わります。
ちなみに人間は気筒数で、1人なら単気筒、4人なら4気筒という具合になります。
このように原理を追求していくと楽器と変わりないんですよね。
なのでこのようにバイクコールで音楽を奏でてしまう人もいます。
逆もまた然りでトロンボーンでバイクの音を再現することも可能です。
バイクと楽器を作っているYAMAHA
上が楽器のヤマハです。音叉が3つ重なっている形。
下がバイクのヤマハです。ホイールの形。ちなみに僕は楽器もバイクもヤマハ推しです。 pic.twitter.com/FaNDlHLNBu
— Sano Kipiro (@kipiro198) March 26, 2018
ちょっとした豆知識なのですが「YAMAHAといえば?」という質問には多くの場合2つの回答が帰ってきます。
YAMAHAはもともと楽器メーカーでした。
【御参考】弊社では「デスノート」の提供はしておりませんが、楽器メーカーが源流なこともあって「エキゾーストノート」を提供しております。ご確認宜しく御願い致します #マイ楽器http://t.co/BMPeJbf5Km pic.twitter.com/Ev6RVX4qXO
— ヤマハ バイク (@yamaha_bike) July 19, 2015
人間が気持ちいいと思うのはV型2気筒
音楽の人気ジャンルのひとつに「ダブステップ」というものがあるのですが、このジャンルでよく使われるブリブリと低音が響いてくる音がバイクのV型2気筒の音に通ずるものがあります。
シンセサイザーで2Hz(ヘルツ)や3hzと人間の可聴域よりも低い周波数にすると、ちょうどV型2気筒の排気音を構成するような音になります。
この音を1つ取り出して均等の間隔で再生すると、シンセドラムのバスになるわけですね。
この一定間隔で鳴る「ドッドッドッドッ」という音は人間にはめっちゃ気持ちよく聞こえるわけです。
ただ、この音は耳を壊しやすいので注意です。
クラシック好きなら4気筒
クラシック音楽が好きな人は4気筒がオススメです。
というのも4つのシリンダーの音がそれぞれ違った音程で聞こえるので、和音に聞こえるんですよね。
なんとなく弦楽四重奏ぽく聞こえるのがまた良いんですよ。
本気で音を作り込みたいなら単気筒一択
と思うのなら単気筒の一択ですね。
波形から音を作るというガチ勢にとって、2気筒や4気筒のように複数の音が混ざっていると難しいのです。
なので単気筒の単発の音だと作りやすいというわけです。
どこまで本気で作り上げたいかは人それぞれですが、バイクの音のためだけに単気筒を選ぶ人の方が少数派だというのは間違いありません。
音にこだわった単気筒バイクの例を挙げるとヤマハのSR400があります。
SR400は1978年から2020年現在まで長く愛され続けている理由は、古き良き本来のバイクの姿であるということ。
ヤマハはそんなバイク魂を長く大切に受け継いでいきました。
その本気度は無響室(一切の音が反射しない部屋)で音を測定するという徹底ぶりから見ることができます。
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SR400に乗ったことない私がSR400の魅力を語り尽くしたい
先日こんなツイートを目にしました。 皆さんが思う「SR400のいいところ」教えてください(´;ω;`) CBR乗りの友人がツーリングのたびに、 毎回毎回「よくそんな不便で遅いバイク乗ってるよね、なにが ...
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まとめ
いかがでしたでしょうか。ここで今までのポイントをおさらいします。
おさらい
- 人間が気持ちいいと思う音はV型2気筒
- クラシック好きなら4気筒がオススメ
- ガチで音を作り込みたいなら単気筒